2017年02月21日

勢揃い・ツラネ5(現代語訳)

 akaju_thum.gif最年少の盗賊・赤星十三郎に引き続き、最後はnan_thum.gif南郷力丸ツラネセリフを、無謀にも現代語訳に挑戦してみようと思います。

ご注意


akaju_thum.gif(赤星十三郎に続いて)

原文:nan_thum.gif: 「さてどんじりに控えしは…」

 現代語訳は、「続きを読む」をクリックして下さい。

(赤星十三郎に続いて)

nan_thum.gif:「さてどん尻(=一番最後)に控えているのは、汐風荒い小ゆるぎ*1の、吹きすさぶ海風に磯馴れた*2松のようにねじ曲がった人柄になっちまった浜育ち、仁義の道に入っても白川の夜船へ乗込む船盗人、波にきらめく稲妻の白刃に脅す人殺し、背負いきれない罪科(つみとが)は、まるで供養塔の虎ヶ石*3 のように重くのし掛かり、”悪事千里(を走る)”*4と云うように、どうせ最期は木の空(=磔の刑になる)*5と、覚悟は予(かね)て鴫立沢*6 、たとえオイラが処刑されて死んだとしても、同情なんかはいらねぇ、念仏嫌いの南郷力丸」

[脚注]


1・こゆるぎ・「ゆるやかな波の(海岸)」の意味。神奈川県中郡大磯町から国府津(こうづ)にかけての海岸、「こゆるぎ(小淘綾)の浜」か?鎌倉市腰越にも小動岬がある。

2・そなれ・磯風(海風)になびき、地面から斜めに生えた状態。

3・とらがいし・供養塔の一種で、曽我十郎祐成の愛人・大磯の虎女が全国に建てたと伝えられている。

4・「悪事千里を走る」…悪いことをすると、その評判はあっという間に広がってしまうこと。

5・「どうせ最後は磔(はりつけ)の刑になってしまう」

6・しぎたつざわ・現在の神奈川県大磯町の西端にある。西行の和歌で有名。
 同名の植物に、カエデの一種でイロハモミジの仲間の「鴫立沢」と、日本椿の一種で、「鴫立沢」という名前の白い椿があり、「最期は潔く散ろう」という意味もあるのかもしれないし、諺の「立つ鳥後を濁さず」ともかけているのかもしれない。

参考:椿 鴫立沢 google画像検索

【南郷力丸とはどういう人物か?】


 nan_thum.gif南郷力丸は元漁師から船強盗(+殺人)という経歴の持ち主です。幼なじみのben_thum.gif弁天小僧とつるんで、悪さばかりしています。

 da_thum.gif日本駄右衛門の手下で実在した人物、南宮行力丸(なんぐう こうりきまる)がモデルと言われています。

 台詞に「小ゆるぎ」、「虎ヶ石」とあるように、彼の出身地は大磯を連想させるが、その後の調査によると、茅ヶ崎の南湖(なんご)地方出身の南湖力丸(なんご りきまる)という舟持ちのドラ息子(=江戸に出てヤクザ稼業に手を染めたらしい)もモデルに入っているようです。彼の供養碑は大正7年に茅ヶ崎の西運寺に建てられたようです。

参照:タウンニュース/第31回茅ヶ崎チョット見てある記/人も町も活気に溢れて―南湖・西運寺より(注:現在リンク切れです)

※どうやら両者は、表記は違えど「同一人物」みたいです

 何故このような現象が起きたかというと、江戸時代は、「同じ言葉」を「同じ文字」で連続して使用することを避け、あえて‘別の文字’を用いて表記することが、当時の美意識だったようです。

 それは村役所の公文書でも見受けられますが、人名でこんなことをされたら、中には誤解や混乱が生じたり、実生活に何らかの不都合があったとしても不思議ではありません。文芸を嗜む上では「風流」であっても、現代人の感覚からすれば「公的な書類」にはふさわしくない、あまり実用的ではない表現ですよね。

[参考文献]


kabuki3.jpg
『季刊雑誌 歌舞伎第三号』松竹株式会社(昭和44年1月)

9501p.jpg
平成7年1月歌舞伎座パンフレット『松竹百年 寿 初春大歌舞伎』

posted by fuji_nishi. at 20:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 南郷力丸
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