2017年01月31日

勢揃い・ツラネ3(現代語訳)

 前回のben_thum.gif弁天小僧から半年以上も放置しておりましたが、今度はt_thum.gif忠信利平のツラネセリフを、懲りずに現代語訳に挑戦してみようと思います。

ご注意


(弁天小僧に続いて)

原文:t_thum.gif:「続いて次に控えしは、月の武蔵の江戸育ち…」



 現代語訳は、「続きを読む」をクリックして下さい。


ben_thum.gif(弁天小僧に続いて)

t_thum.gif「続いて次に控えているのは、月の武蔵1 の江戸育ち、ガキの頃から手癖が悪く、抜け参り2 からグレ出して、旅を稼ぎに西国を廻って首尾も上々、吉しの山3 、(チョロく儲けられそうな)"うまい”仕事も大峰(おおむね?)4 に足を止めた奈良の京(みやこ)、碁打(ごうち)と云って寺寺や豪家(ごうか)へ入込み、盗んだ金の罪科(つみとが)はみたけ5 (身丈・三岳山)ほどになり、その都度、蹴抜の塔6 を二重にも三重にも蹴破って逃走さ、たび重なる悪事は高飛びできない(=もはや逃げ切れない)が、たとえ逮捕され判官7 に判決を下されたとしても、己の悪癖からは逃れられず、犯罪を犯すことは一生止められないだろう、それどころか判官の名前を騙って悪さをするかもしれない忠信利平」



[脚注]


1・むさし武蔵国のこと。江戸時代までは、今の東京都と埼玉県全域と、神奈川県川崎市のあたりを指した。

追記:セリフの中に「月の武蔵」という言葉が出てくるのは、武蔵の国では、山から出て山へ沈む月が、草原から出て草原に沈むくらい平野が広大だと言われ、和歌に武蔵野・武蔵と月という言葉一つになって詠まれている事があるからだそうです。

ー以上、さくたろう様のコメントより引用。大変ためになる書き込みありがとうございました。(2009年2月22日)

 もしかしたら出身地は青梅か八王子 あたりかもしれない。

2・ぬけまいり・伊勢神宮への参拝「お伊勢参り」は、江戸の庶民の一大イベントだったが、まず親の承諾と(地元の)大家から手形をもらわないといけなかった。「抜け参り」とは、それらの手段を省いた不正な旅行のこと。ほとんど家出。

3・よしのやま・桜の名所でもある 奈良県の吉野山。「首尾もよし」とかけている。歌舞伎『義経千本桜(狐忠信)』にも登場する。

4・おおみね・日本百名山の一つである大峰山(吉野山から紀伊の熊野までの山脈全体を指す)は、奈良県中央にあり、標高1915m。古くから修験道の山として知られ、山伏達の修行の場で、今でも女人禁制である。

ごうか:金持ちで、その地域で権力や勢いのある家のこと。

5・みたけ・京都の福知山にある三岳山(みたけさん)。別名・丹波山上。
 この山には源頼光が大江山の鬼退治の前に、八合目にある蔵王権現[現・三嶽(みたけ)神社]で戦勝祈願をし、山頂から大江山を偵察したという伝説が残されていて、「見立て山」とも呼ばれている。

6・けぬきのとう・吉野山の奥、金峰神社の裏手に存在する。源義経がこの社の屋根を蹴破って逃亡したと伝えられる。

参照:義経伝説/秋の吉野義経伝説紀行 義経蹴抜塔

7・ほうがん(はんがん)・別名・検非違使尉(けびいしのい)とも呼ばれ、非法(=法律を違反すること)の検察を司る役職の人。

-このセリフはたてやま村歌舞伎保存会(旧 たてやま子ども歌舞伎)さまのブログによると、佐藤忠信が「義経の身替わり」をして義経を守ったという、故事から由来しているそうです。(平成19年5月6日追記) 

後日、辞書で調べてみたら、源義経のことも指す(彼の役職が「検非違使の尉」=「判官」であったことに由来することから)みたいですね。

[忠信利平とはどういう人物か?]


 t_thum.gif忠信利平の具体的な人物像は、こちらこちらの記事にも書いたような感じです。

 元武士で腕っぷしが強くて、剣の達人です。主君への忠誠心はあるものの、手癖が悪くて盗みを繰り返してしまいます。どうやら抜参りをきっかけに、グレ始めたようです。

仕事にしても半年は続かず、盗みが発覚する度に逃走してしまいます。西国(関西)を転々と旅しながら、剣で稼いでます。そこが「神出鬼没の盗賊」と呼ばれる理由です。

 彼の台詞は「ガキ(幼児)」や「グレる」など結構、「今でも通用する」言葉を多用しています。もしかしたら、当時(幕末)の若者用語をバリバリ駆使していたのでしょうか?寡黙なようでいて、意外と軽薄なのかもしれません。

[参考文献]


9501p.jpg
平成7年1月歌舞伎座パンフレット『松竹百年 寿 初春大歌舞伎』

kabuki3.jpg
『季刊雑誌 歌舞伎第三号』松竹株式会社(昭和44年1月)





『広辞苑』第三版・岩波書店(昭和58年)
posted by fuji_nishi. at 16:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 忠信利平
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