2017年02月20日

勢揃い・ツラネ4(現代語訳)

 前回のt_thum.gif忠信利平のツラネに続き、今度はakaju_thum.gif赤星十三郎のツラネセリフの現代語訳に挑戦してみようと思います(無謀)。

ご注意

「勢揃い」

(忠信利平に続いて)

原文:akaju_thum.gif「又その次に連なるは、以前は武家の中小姓…」


 現代語訳は、「続きを読む」をクリックして下さい。
(忠信利平に続いて)

akaju_thum.gif「又その次に連なっているのは、以前は武家の中小姓をしていたが、かつて仕えていた亡き主の為に切取(強盗)1してみても、砥上ケ原2 で身の錆を磨ぎ直しても、盗み心は錆びた鈍い刃のように抜けず、深みにはまる3、柳の都谷七郷(=鎌倉中)4 、花水橋5 での華麗な切取(強盗)の様子から今牛若6 との評判も高く、人の目に忍ぶ姿も月影ケ谷7 神輿ケ嶽8 、今日の明け方にも命が消える寸前の星月夜9 その名も赤星10 十三郎」



[脚注]


1・きりとり・切腹かと思いきや、おそらくpiropyonさんのご指摘どおり「切取り強盗」の略。

2・とがみがはら・現在の江ノ電の石上駅付近。イトーヨーカドーの近く(めちゃくちゃローカルネタですみません!)にある砥上公園のあたりか?

Yahoo!地図

togamip.jpg

<参考サイト>
藤沢市内の文化財マップより

 江ノ島弁財天への参道である江ノ島道に沿った細長い集落のこと。砥上は土甘郷(とかみごう)が、砥原という広い荒れ地の呼名となり、 後にそこに出来た集落名になったともいわれている。

「身の錆をとぎ直す」と語呂合わせ。

<関連時期>
砥上ヶ原とは結局どの辺なのか?

砥上ヶ原その2

皇大神宮(土甘郷とかみごう神社)

3・『ゴレンジャー』の「ミドレンジャー」のモデルとなったと思われる箇所。

4・やつしちごう・山に囲まれた地形の鎌倉には、七つの谷(やつ)がある。

鎌倉谷七郷とは「小坂(おさか・鎌倉市小袋谷周辺の旧地名・JR横須賀線の大船駅と北鎌倉駅の中間にある)・小林(現在の鶴岡八幡宮のある旧地名・小林クに由来か?)・葉山(現・三浦郡葉山町)・津村(鎌倉市津・腰越〜西鎌倉近辺の地名)・村岡(現・藤沢市村岡)・長尾(現・横浜市栄区長尾台近辺)・矢部(現・横浜市戸塚区矢部町近辺)」の事。

「谷間の七つの郷」=「鎌倉中」。

5・はなみずばし・神奈川県平塚市と大磯町の間を流れる花水川に掛かる橋。実は隅田川に掛かる吾妻橋のこと。

6・いまうしわか・義経の幼名が「牛若丸」だったことから「現代版・義経」。女のように美しく、身軽な美少年のこと。

7・つきかげがやつ・現在の鎌倉市極楽寺、江ノ電沿線の極楽寺駅と稲村ヶ崎駅の間の、江ノ電の整備工場の近くの踏み切りを渡ったところらしい。

 どうやら阿仏邸旧蹟は存在するようです。

参照元:e-ざ鎌倉・ITタウン/鎌倉史跡碑事典より

 「月影地蔵」の場所は、現在の鎌倉市極楽寺、稲小の先(体育館の方)あたり。今でこそ整備されているが、昔はこのへんに「おばけトンネル(通称おばトン)」があり、真っ暗でコウモリも飛び交っているような地域であった。

<注意>単なる「普通の住宅地」なので、見なれない人があんまりウロウロしていると、「不審者」に間違われるかもしれません。

8・みこしがたけ・一説には現在の鎌倉市長谷の大仏から甘縄神明社にかけての裏山周辺と伝えられる。

9・ほしづきよ・月のない星空と、極楽寺切通しの先・坂ノ下にある星月夜の井戸とをかけている。
 
 和歌や俳句などの世界では「星月夜」は「鎌倉(山)」の枕詞、秋の季語だそうです。

10・あかぼし 名字の赤星と明けの明星(あけのみょうじょう)を掛けている。明けの明星とは、明け方の東の空に輝く金星のこと。明け方、燃え尽きるかのように輝く金星と、自身の命が燃え尽きる寸前であることを比喩している。

※この演目にも登場する「御輿ヶ嶽」や「月影ヶ谷」、「砥上ケ原」などの地名は、「所番地」の「正式な地名」の意味ではなく、昔から伝わるその場所(=集落)を指す「通称名」みたいなものです。

[赤星十三郎とはどういう人物か?]


 akaju_thum.gif赤星十三郎の人物像に関して言えば、初期の初期に書き込んだこの記事が一番まとまっているような気がします。

 元武家の出身で、t_thum.gif忠信利平とはかつて主従関係(=親の代)にあり、劇中では源義経(赤星)と佐藤忠信(忠信)との関係をなぞらえています。

 現代語訳では省いてしまいましたが、元のツラネセリフには「腰越(こしごえ)」という単語が出て来ます。おそらくこれも義経ゆかりの「腰越状」が関係しているのでしょう。あと「腰」は、刀や袴など「腰につけるもの」の数を表す単位や、「腰のあたりに結ぶ紐」のことも意味するらしいので、セリフの感じからして「刀」のことを意味していると思われます。

 メンバーの中では育ちの良さが感じられる「お坊ちゃま」な雰囲気です。しかし一見、女と見まごうような柔和な美少年ですが、ツラネセリフでは切り取り強盗もしていたようです。

 赤星十三郎のモデルの一人は、白井権八(浄瑠璃や歌舞伎狂言の主人公)と言われています。その白井権八とは、辻斬りも厭わない冷酷無情の若者です。「雉も鳴かずば打たれまい」とうそぶくような生意気盛りの美少年で、かの侠客・幡随院長兵衛と「鈴ヶ森」で対決したという芝居まであります。

 赤星も、ただ大人しいばかりの美少年ではなさそうです。



[参考文献]


kabuki3.jpg
『季刊雑誌 歌舞伎第三号』松竹株式会社(昭和44年1月)

知らざあ言って聞かせやしょう―心に響く歌舞伎の名せりふ (新潮新書) -
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kmkrmn.jpg『わたしの鎌倉物語』リーブ企画出版株式会社(1999年)

『かまくら子ども風土記 全4冊』(鎌倉市教育委員会発行/鎌倉市教育研究所編集/平成12年1月31日発行)
posted by fuji_nishi. at 20:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 赤星十三郎
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