2005年11月01日

「浜松屋」での厄払い(セリフ)

benten.gif「知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂(はまのまさご)と五右衛門が、歌に残せし盗人(ぬすびと)の、種は尽きねぇ七里ガ浜 、その白浪の夜働(よばたら)き、以前を言やあ江の島で年季勤めの児ケ淵(ちごがふち)、江戸の百味講(ひゃくみ)の蒔銭(まきせん)を、当てに小皿の一文子、百が二百と賽銭の、くすね銭せえだんだんに、悪事はのぼる上の宮(かみのみや)岩本院で講中の、枕捜しも度重なり、お手長講を札付きに、とうとう島を追い出され、それから若衆(わかしゅ)の美人局(つつもたせ)、ここやかしこの寺島(てらじま)で、小耳に聞いた*祖父さんの、似ぬ声色で小ゆすりかたり、名さえ由縁(ゆかり)の弁天小僧菊之助とは俺がこった。」

参考文献:『知らざあ言って聞かせやしょう―心に響く歌舞伎の名せりふ』赤坂 治績 / 新潮社より

 
 このセリフで簡単な経歴をまとめると、幼少の頃、初瀬寺(=長谷寺)での騒動で親とはぐれた弁天小僧は、江の島の岩本院で稚児(ちご)として年季奉公する。

・稚児は僧侶見習いでもあり、僧侶の「身の回りのお世話をする」役目でもある。時には妻帯を許されていない僧侶の「夜のお相手」をさせられていたのかもしれない。

・江の島に来た参拝客の賽銭をくすねて少額の賭け事に興じていたが、次第に盗む金額がエスカレートし、道を踏み外す。賽銭の使い込みに飽き足らず、たびたび参拝客の宿坊に入り、参拝客の寝ている間に金を盗んだので、手癖が悪いと地元で評判となり、とうとう島を追い出されてしまう。

・以来、ゲイの男と結託し、下心アリの男に近づいては金を脅し取ったり、「名前」だけは縁のある「音羽屋(おとわや)」の似てない声色で芝居をして金をとったりなどの悪行三昧をしてきた。

 今、世間を騒がせている弁天小僧菊之助とは俺様のことだと、自分の正体を明かしているワケです(絶対にマネしちゃダメですよ!)。

 岩本楼に関する面白い記事を発見したので、紹介致します。この記事で弁天小僧がギャンブルにはまった理由が分かります。 湘南のKinさんのサイト:湘南散歩道/湘南ぶらり歩き/岩本楼/

湘南のKinさん、ありがとうございました。

<注>
しちりがはま・現在の鎌倉市七里ガ浜。だいたい稲村ケ崎と江の島の中間。

えのしま・鎌倉市腰越と隣接する島。現在は神奈川県藤沢市に属する。

ちごがふち・江の島の西岸にある淵の名前で、弁天小僧が寺の雑務や僧侶の「お手伝い」をする稚児として年季奉公していたことと、かけている。

 名前の由来はその昔、ある僧侶が江の島参詣に来た折、稚児の白菊(男)を見初め、思いを告げたが、「禁断の愛」に白菊は悩み、ここから身投げし、僧も後を追って自殺したという伝説から。

関連記事:稚児行列

かみのみや・江の島内にある寺社のこと。だんだん「エスカレートしていく」意味の「のぼる」と「上の宮」が掛け詞になっている。

いわもといん・同じく江の島内にある寺社。現在は岩本楼という名前の旅館になっている。

てらじま・「ここらへんの寺社一帯に」という意味と、初演した市村羽左衛門(いちむら うざえもん)の本姓(名字)である「寺島」とをかけている。

「じいさんの」の箇所は尾上一門でない役者が演じる場合は、「音羽屋(おとわや)」となる。「じいさん=三代目・尾上菊五郎」のこと。「ここやかしこの寺島で〜」以降の部分は、楽屋落ち

 蛇足ですが、冒頭の「知らざぁ言って聞かせやしょう」「知らざぁ」は、おそらく「知らざりければ」の略(促音便)で、現代語に訳すると「(巷で話題になっている)この俺様のことを知らないならば、言って聞かせてあげようじゃないの!」みたいな感じになるのではないかと思います。

 このセリフの詳しい解説は、下の参考文献をご覧になって下さい。

___________


[参考文献]




p0404.jpg
平成16年4月歌舞伎座パンフレット(2004年4月)

9501p.jpg
平成7年1月歌舞伎座パンフレット『松竹百年 寿 初春大歌舞伎』

kabuki3.jpg
『季刊雑誌 歌舞伎第三号』松竹株式会社(昭和44年1月)





___________


 もしよろしければ、私のミニコミも読んで下さい(宣伝)。
『白浪五人男考』


hyoushi.jpg[表紙]

urahyoushi.jpg[裏表紙]

B5判・横とじ/本文48Pです。定価は税込み1000円です。

 現在、以下の書店で発売中です。実際にお手にとって下さると嬉しいです。

・書肆アクセス(東京/神田神保町)10冊納品

模索舎(東京/新宿御苑そば)5冊納品

Gallery ART SPACE 2冊納品

・フィクショネス(東京/下北沢)5冊納品

タコシェ (東京/中野ブロードウェイ3F)5冊納品

・たらば書房(神奈川/鎌倉駅西口すぐ)5冊納品(立ち読みできます)

・高円寺文庫センター(東京/高円寺)3冊納品
posted by fuji_nishi. at 15:30 | Comment(2) | TrackBack(0) | 弁天小僧
この記事へのコメント
FUJI-NISHIさん
Kinのあのような駄文でよろしければお使い下さい。
あれは旅館の案内や何かを見て書いたんですから間違いないと思いますが。
Posted by 湘南のKin at 2005年11月01日 20:48
湘南のKinさま

いえいえ、駄文なんてとんでもない!あのページは弁天小僧が道を踏み外すきっかけとなった、岩本楼の「意外な一面」を垣間見れる素晴らしいページだと思います。これからも、色々と教えて下さい。

お言葉に甘えて、さっそく湘南のKinさまのページを紹介させていただきました。本当にありがとうございます。それから、ご報告が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
Posted by fuji-nishi. at 2005年11月01日 21:41
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
人気記事
    富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART